2010年10月22日金曜日

貧者のエチカ

現在、フランス各地で反年金改革闘争が展開されているが、なかでも南東部の都市リヨンがあつい。あの『ふらんす物語』のリヨンである。ところで、フランス語には「破壊行為者」を意味する「カスールcasseur」という言葉がある。当局発表によれば、そのリヨンには「カスール」が1000人ほど潜んでいるそうだ。当地に駆けつけた内務大臣のオルトフーいわく「フランスはカスールのものではない」、サルコジいわく「カスールが勝利することはないだろう」。付け加えておけば、そのカスールたちはリヨンのみならず、マルセイユにもディジョンにもトゥールーズにもパリ近郊ナンテールにも大挙して出現してきている。
サボタージュにせよラッダイトにせよブロカージュにせよ、貧者が力を発揮するときにはいつもモノやモノの流れの破壊がある。また、貧者にとってそうした行為には大いなる悦びがともなう。つまり、力と悦びの増大であるという点において、「破壊するcasser」は貧者のエチカであり、その根底にあるものなのである。万人のエチカではなく、貧者のエチカ。現在のリヨンの光景は、その発現なのだ。



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