2009年1月12日月曜日

短編小説『パレスチナ・デモ』

「おれたちがパレスチナ人だ!」
そう叫びながら車に火をつけようとしていると、デモにまじっていたサルコジみたいな顔のおっさんが走りよってきて、わなわな震えながら、説教をはじめる。
「お前たちは何も分かってない、ただデモで暴れたいだけだろう、こっちは迷惑してるんだ、お前らが車に火をつけたり、バス停を壊したりするから、こうやって警察に目をつけられるんじゃないか、なんでおれたちまで催涙ガス浴びなきゃならないんだ、ゲホゲホ、そもそもイスラエルとパレスチナというのはだな、ゲホ、複雑な、現代思想、現代政治の中心ともいえる問題なんだ、ゲホ、お前らが暴れるおかげで沿道の人たちにわれわれの正しいメッセージが届かないじゃないか。真面目にデモしている人たちを見習え、ちゃんと勉強してからデモに来い、来て、おとなしくしてりゃいいんだよ!いいか、おれはこれでも中学の歴史の教師やってんだ、歴史を知らない人間はあほ…」
言い終わらないうちに、おれの横にいた、なぜかチュニジア国旗をマントみたいになびかせていた若者が、そのチュニジア国旗で、説教おやじの頭をくるんでしまった。モゴモゴ…。結局おれは今日2台しか燃やせなかった、チュニジアマントのかれは4台だといってあとで自慢していた、おれの彼女はあろうことか自転車を燃やしていた…。

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